実話に影響を受けた映画7選
「事実は小説より奇なり」と言いますが、映画をみていると本当にそのことを実感します。
世の中には実に様々なライフストーリーが眠っていて、それが映画という装置を媒介して蘇り、生き生きと私たちに物語ってくるというのは素敵なことですね。
ということで今回は、実話に影響を受けた映画をテーマに、個人的におもしろいと思ったものをピックアップしてみました。
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遠い空の向こうに (October Sky)
特段得意なこともない、ぱっとしない高校生ホーマーが、ロシアの人工衛星スプートニクを夜空に観察した日から、彼の頭はロケットを飛ばしたいという思いでいっぱいになります。
若さみなぎるジェイク・ギレンホールは必見
ホーマー役を演じるジェイク・ギレンホールが若くて、今よりはるかに癖のない顔をしてます。眠たそうな目つきとはにかんだ表情がチャーミングな好青年。この映画、特に悪役もいないし、周りの人がみんなホーマーのことを応援してくれるのですごくあったかいです。
ちなみに数学の先生の役をしているローラ・ダーンは2019年のネットフリックスオリジナル映画「マリッジストーリー」にも出ていました。へにゃへにゃした独特なリズムの喋り方はあの映画の役作りのためかと思っていたら、この映画でも全く同じ喋り方でした。なんとなく癖になります。
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グリーン・ブック (Green Book)
1960年代アメリカが舞台。実在したピアニスト、ドン・シャーリー(マハーシャラ・アリ)と、彼のアメリカ南部ツアー中のボディーガード役をつとめたトニー・リップ(ヴィゴ・モーテンセン)のロードムービー的友情映画。
正反対の性格が生み出す化学反応
グリーンブックとはアフリカ系アメリカ人が利用できるレストランやモーテルやガソリンスタンドなどを掲載した旅行者向けガイドブックのこと。このガイドブックなしでは旅行中どこでどんな人種差別を受けるのかが想像もつかないなんて、今では考えられない話です。
ドン・シャーリーとトニーリップの掛け合いが最高。冷静沈着なドンと気性の荒いトニーの会話が生み出す化学反応は見ものです。そういえば最近セロニアスモンクとコラボしているドンシャーリーの楽曲を聴いてみたのですが、ドンシャーリーの弾くピアノは優しい人柄があらわれていていいですね。
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ビューティフル・マインド (A beautiful Mind)
頭が切れるが風変わりな性格ジョンナッシュ(ラッセル・クロウ)の、プリンストン大学入学からノーベル賞受賞までの経過を描きます。
七変化のラッセルクロウ
ミュージカル映画『レ・ミゼラブル』では冷徹極まりない役どころを演じていたラッセルクロウですが、同一人物であることを疑うぐらいこの映画ではひねくれていてナード感の強いジョンナッシュを演じきっていました。後にナッシュ均衡の理論でノーベル経済学を受賞した彼ですが、栄光のあるところには想像以上の苦労が潜んでいるんだなあと思いました。
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白バラの祈り (Sophie Scholl Die Letzten Tage)
ミュンヘン大学(LMU)の学生であったゾフィーショルが、反ナチ組織である白いバラ(Die weiße Rose/ヴァイセ・ローゼ)として抵抗運動を展開してから、ゲシュタポに引き渡され処刑されるまでの日々を描いています。
LMUの資料館は行く価値あり
鑑賞後LMUで実際に反ナチの声明にかんするビラがばらまかれたホールを歩いたり、大学内にあるWeiße Roseの資料館を訪れたりして、より現実に起こった話として身に迫ってきた印象深い作品です。
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ドリーム (Hidden Figures)
1960年代、NASAで働いている3人のアフリカ系アメリカ人の女性が人種差別とたたかいながらも有人宇宙船計画成功のために奮闘します。
数字を巧みに操る女性、カッコイイ。
時代がちょうど上記の『グリーン・ブック』とかぶっていますが、アフリカ系アメリカ人旅行者の人種差別対策のためにGreen Bookが普及していた時代、NASAでは給与の差別や、トイレの隔離などが行われていたのですね。そんな時代に、差別の声を押しのけてNASAのエンジニアまで上り詰めた彼女たちにシビれる作品です。
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牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件
1961年、台北で起こった14歳の少年のガールフレンド殺害事件に着想を得た映画です。
純粋さゆえの残酷な結末
エルヴィスの歌声と台湾の風景が妙にマッチしています。主人公の小四(シャオスー)がまっすぐすぎて見てられない。純粋なものが純粋であるがゆえに取り返しのつかない間違いを犯してしまうことの残酷さ。
4時間だし内容も内容だしでだいぶ体力を奪われてしまいますが、一見の価値ありです。私はこの映画を、数年前に渋谷の小さめのシネコンで鑑賞しました。鬱陶しいほど蒸し暑くてまぶしい天気だったのがちょうど台湾の真夏のようだったので、よく覚えています。
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Lion ライオン 25年目のただいま (Lion)
5歳の時にインドで迷子になってしまったサルーという名の少年。20年の時を経てオーストラリアで養子として生活していましたが、次第に故郷にいる家族への思いが募り、やがてGoogle Earthを使って故郷の家を探し出すことを決意します。
今だからこそあり得た話
実話であることを疑うようなストーリーです。ITが発達していなければサルーは家族を見つけられなかったであろうことを考えると、感慨深いですね。いつ何が起こるか分からないような混沌としたインドの街ですが、静かな夜の情景はなぜかとても惹きつけられました。
いかがでしたか?こうして振り返って見ると、近年特に実話を元にした映画が増えているように感じます。
映画によって事実への忠実度の差こそあれど、その出来事や人物を知るためのよいきっかけとなるのはいいことですね。